新型コロナウイルスへの提言

2020年11月、身内がコロナウイルスに罹患したことで「濃厚接触者」となったことが判明。大阪でドラマ収録に入った直後だったため、川上さんはすぐに撮影現場から離脱。検査を受けた結果「陽性」と診断され、そのまま大阪のホテルで10日間の隔離生活を送ることになった。その間、発熱や嗅覚障害などさまざまな症状に悩まされたが、帰京後、川上さんはコロナの症状や後遺症について多くの人に知ってもらいたいと、SNSやYouTubeなどで情報発信。その後もメディアの取材や講演活動も積極的に引き受け、感染予防や感染後の行動の留意点などについて発信し続けている。 自身が生まれ、仕事でも度々通っているスウェーデンでは、コロナパンデミックにおいて、ロックダウン=都市封鎖を行わなず、「感染することで集団免疫を獲得」しようという、世界でもまれな政策がとられた。人々はそのなかで、住民どうし困りごとを助け合う活動を行っていたと川上さんは現地で見聞きしている。パンデミックという状況のなかでも「自らの行動は自ら決める」スウェーデン人の姿に、川上さんは、自由とは、自立とは、生きるとはどういうことなのか、深く考えさせられたと語る。
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1980年、NHKドラマ人間模様『絆』で俳優デビュー。TBS系『3年B組金八先生』で脚光を浴び、その後も映画や舞台、テレビなどで幅広く活躍する。インテリアデザイナーの両親が留学していたスウェーデンで生まれた。俳優として活動する一方で、ガラスデザイナーとしても活躍。また、「猫と人との共生」を掲げ一般社団法人「ねこと今日」を設立。インターネット上にコミュニティを立ち上げ “ゆるく”交流しながら、「心地よい暮らし」とはなにか、提案を続けている。
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1980年、NHKドラマ人間模様『絆』で俳優デビュー。TBS系『3年B組金八先生』で脚光を浴び、その後も映画や舞台、テレビなどで幅広く活躍する。インテリアデザイナーの両親が留学していたスウェーデンで生まれた。俳優として活動する一方で、ガラスデザイナーとしても活躍。また、「猫と人との共生」を掲げ一般社団法人「ねこと今日」を設立。インターネット上にコミュニティを立ち上げ “ゆるく”交流しながら、「心地よい暮らし」とはなにか、提案を続けている。
Clip.01思いもよらなかった新型コロナ感染
◇川上さんインタビュー ● 最初に感じた「異変」 大阪にドラマの撮影で行っている時だったので、毎朝みなさんスタッフも含めて体温計を計るところから1日が始まる状態の中で「ちょっと熱っぽいな…」というのが出てきたんですよね。「これはよくある風邪の時に感じるやつかな?」と思っていて、でもそれがコロナとかじゃなくて「ちょっと体調が…疲れてるのかな?」っていう。ただ、その時に出されたお弁当が、私の場合はものすごくしょっぱく感じて、「絶対にこのお弁当は失敗したんだ」と思っていたんですよ。何か「塩加減を間違えて作ったお弁当だよね」と思って、他の人に「これ、相当ひどいね」っていう話をしたのは覚えていて、周りがだからちょっと「そうかしら?」ぐらいな、「ちょっと味が濃いかもしれないね」ぐらいの感じだったんですけど、最初はそんな感じでした。 ◇テロップ 【しかし、1本の電話で状況は一変した】 ◇川上さんインタビュー ● 「濃厚接触者」から「コロナ患者」へ 私のパートナーがいて、その彼から「コロナの(感染)疑いがある」っていう(連絡)が入った時点で、検査以前に身内に感染者が出たという時点で、その当時は「濃厚接触者」っていうことで、「保菌者」ということですよね、症状が出ていなくても保菌者ということで、仕事も一切、隔離状態になるっていうのが決まって。 (既に)志村けんさんとか岡江久美子さんとか(コロナで)お亡くなりになっていたので、何かちょっと怖い…ただ、特に(自分に)持病があったわけではないので。でも、私の身内の者もすぐにICUに入る状態だったので、結構(ウイルスが)強かったんだと思うんですよね。その当時って肺炎を起こして肺が真っ白になるっていうような感じだったので、怖かったですよ、本当に怖かったです。 ◇テロップ 【当時は「第3波」が始まった頃。川上さんはPCR検査で陽性となり隔離された。】 【体温は数時間のうちに36〜38度を繰り返す、体験したことのない症状だったという】 【隔離生活では 体調不良でも身の回りのことは自分で行わなければならない】 【食事の用意ができると 館内放送が流れ、決められた場所まで弁当を取りに行く】 【川上さんは嗅覚が失われる症状が出てほとんど食べられなかったという】 ◇川上さんインタビュー ●嗅覚を失い食欲低下、発熱も… 食欲はもうまったくなかった。嗅覚がないせいもあるのか、まったく食事は…ちょっとできる感じではなかったですね。体重も5キロぐらい落ちたんじゃないですかね。ぜんぜん食べられなくて…っていうのが続いてましたね。 (体温は)38度5分ぐらいまでは行ったんですけど、何時間か後に36度まで下がるとか、(上下する)感じで。それがちょっと風邪とは違う不思議な症状でしたけど。もう諦めるしかない感じで、狭い(隔離された)部屋でもう…ちょっと切ない感じで、ガラス越しに、向こうは普通の健常者で、こっちは…っていう感じでしたけど。
Clip.02Clip 02 友人に感染した 新型コロナ・死の恐怖
◇テロップ 【隔離生活のなかで 川上麻衣子さんは あることに苦しめられた】 【友人に コロナをうつしてしまった可能性が出てきたのだ】 ◇川上さんインタビュー ●友人がコロナで危篤に… 撮影に入る前にゴルフに誘われていて。彼女とはその時は友だち関係でもあったので、一緒に、地方だったので前乗りしてゴルフ場の近くのホテルに泊まって「1泊して(ゴルフを)やりましょう」っていう話だったんですけど。居酒屋さんもすごく神経を配っている時だったんですけど、取り箸とかもバラバラにしなきゃいけないとかっていうことは分かっていたんですけど、全然無意識に、なめろうを食べちゃったんですよね、一緒に。で(感染、隔離後に)LINEでやり取りをしていて、「私はいま隔離されてるけど、(あなたも)多分濃厚接触者だし、うつっている可能性高いから気をつけてね」っていう話をしているところで彼女の方から「何か私も寒気がしてきて、ちょっと頭が痛くなってきたので、ちょっと休んでいいですか?」って。「もう休んで休んで」って言った夕方に(彼女が)危篤になってるのかな。だからもうあっという間だったので、その展開が。 ◇テロップ 【重体になった友人は 搬送先の病院でECMO(体外式膜型人工肺)による治療を開始】 【幸い一命を取り留めたが、その後も重篤な状態が続いた】 ◇川上さんインタビュー ●祈るしかない 一回そのECMOを外れたって言って、「ああよかった」ってみんなで喜んだんですけど、その直後にもう一回危篤状態になって、もう一回ECMOに入るので…いやもう本当にパニックですよね。もう「どうしよう…」っていうことと、でも病院からの連絡っていうのは、旦那さんのところにもそんな毎日あるわけじゃないみたいなんですね。「状況が悪くなったら連絡ある」っていうようなことだったから、本当にもう祈るしかないっていう。もう本当にみんなで泣きながら電話で話したのを覚えてます。 ◇テロップ 【その後、無事に回復した友人の橘一江さん】 【コロナを乗り越えた2人は 現在、俳優とマネージャーとして一緒に活動している】
Clip.03Clip 03 “コロナ”という偏見 感染して謝罪する社会
◇テロップ 【10日間の隔離生活を終え、日常へと歩み始めた川上麻衣子さん】 【そこで いくつかの葛藤や戸惑いを感じたという】 ◇川上さんインタビュー ●ワイドショーなどの報道と、コロナへの偏見 こういうお仕事をしているので、すぐにワイドショーとかで「川上麻衣子が感染しました」みたいなことが報道されていたので、帰りに新幹線に一人で帰らなきゃいけなかったんですけど、それがすごく不安でしたね。なんか「ああ、あの人コロナなんだよね」っていうことになるんだろうなと思って。それはちょっと肩身が狭いというか、周りも嫌な気持ちになるだろうし、自分もちょっとつらいなというのがありましたね。 ◇テロップ 【帰京後、川上さんは コロナの体験を、社会にどう発信すべきか 熟考したという】 ◇川上さんインタビュー ●感染を「謝罪」する風潮への疑問 隠してしまうのが一番良くないというふうに思ったし、それがやっぱり感染拡大していくことになるだろうと思ってたので、公表しましょうっていった時に、その当時、すごく話し合ったのは、感染した皆さんが「すいませんでした」っていう時だったんですよね。「コロナにかかって申し訳ありません」っていう。それを言うべきなのかどうかっていうのを、(スタッフと)すごい議論しましたね。身内のスタッフには本当に申し訳ないと思うんですけど、一般の方たちに向けて、「すいません」と言ってしまうと、コロナになった人が悪い人みたいに、「生活が荒れてる人」とか、「遊び人がなりました」みたいな、そういうイメージがあって、「出歩いていてごめんなさい」みたいなことだったんだと思うんですけどね。 これからどんどん(コロナに)かかった人たちがそういう思いをしなきゃいけないのは「違うんじゃないか?」っていうことでだいぶ議論して。そういう意味では覚悟を持って(情報発信)しましょうっていうふうに話したのは覚えてますね。 ◇テロップ 【2020年 11月6日に発熱、 隔離期間中の12日に事務所として感染を公表した川上さん】 【川上さんはそこで終わらせず、帰京後SNSなどで自らの体験を発信し始めた】 ◇YouTube配信 「発熱の24時間の相談とかって、電話でできるところがあります。教訓としてあるのは、24時間対応の電話であれば、なるたけ早朝4時とか5時ぐらいにかけた方が繋がりますし、ゆっくりお話ができますので」 ◇YouTube配信 「ついついお酒とか飲んでしまうと、自分の直箸でふっと手が出てしまったりするようなことというのはあると思うので、もうそういうところももう一回皆さんもちょっと注意して乗り切っていただきたいと。」 ◇YouTube配信 「やっぱり自分が他人にウイルスをまき散らしてしまう恐怖、大切な人に限って自分をうつしてしまう可能性がすごく大きいということを感じますので、しっかりとマスクが一番ということを本当に私、今回教わったので、皆さんにもぜひそれを持っていただきながら、大事な人を守ってほしいなと思います。」 ◇川上さんインタビュー ●人間は「主」ではなく、「生命の一つ」でしかない あの当時みんなやっぱり、誰かがそこで咳しただけで「うっ…」って見るような、何か本当に…他人が呼吸して生きていることがすごくイヤというか、近くで誰かが何かを行動することがすごくイヤって感じることもあったり。 何か疑いの目で全部見ていくとか、アラ探しじゃないですけど、「違うな」と思いながら、どうやっていったらいいんだろうなっていうのはすごく考えましたけど… やっぱり大きい流れで見たら、必ずそういう病とか疫病みたいなことっていうのはずっと繰り返されてきているので、人間が「主」ではないんですよね、この世の中は。何かずっと人間が第1で、それに不都合なものは、排除されながら生きている気でいたところが勘違いだったんだな、っていうのをすごく思いましたし、これからももちろん、また新しい何か(疫病)があるっていうことは、これは普通の自然のことであって、人間もね、本当に生命の一つでしかないのでね、何かそれは学んだ気がしますよね。
Clip.04Clip 04 日本とスウェーデン 感染対策の違い
◇テロップ 【川上麻衣子さんはスウェーデン ストックホルムの生まれ】 【インテリアデザイナーの両親は、麻衣子さんを幼少期から子ども扱いせず 自立心を育んだ】 【スウェーデン人は、個の尊厳と自由を尊重する国民性で知られる】 【パンデミックでもロックダウンを行わず、マスク着用を強要しない政策がとられた】 【賛否は分かれたが、社会を維持する選択の一つとして、いまも検証が進められている】 ◇川上さんインタビュー ●個人の暮らしを制限しなかったスウェーデン あのコロナに関しては、全世界が同じ時期に同じ事が起きている珍しい状況だったので、やっぱり国それぞれの考え方が出るんだと思うんですよね。実際にスウェーデンに行ってみたら、もちろんマスクしている人はいないですし、ステイホームをせずに感染することで減らしていく、感染者が出ることで免疫をつくっていくっていう、「だから行動を制限しません」ということを発表されていたので、失敗なのか成功なのか皆が見守ったっていうところもあるんですけど、それを「失敗だ」っていう時期もありましたし、「結果的には成功だったのかのか…」っていう風に、どちらがっていうのは分からないですけど…やっぱり亡くなった方もその分多かったのかもしれないですけれど。若い人が、家族じゃなくても、年配の方の買い物をしたとか、皆がみんな自分たちで協力しあったっていうことを言ってましたね。そういうことを受け容れる国なんだなっていうのは改めて感じました。「生きる」ということに関して、ものすごく尊重をする。制限をするということをすごく嫌うんじゃないですかね。(スウェーデン人は)自立して何かをするということをこだわっているので。 ◇テロップ 【2018年から「猫と人との共生」を掲げ、“日常”の大切さを提言、活動してきた川上さん】 【コロナの経験では 日常の大切さに加え、「備え」の重要さを実感したという】 ◇川上さんインタビュー ●平時から「備え」ることが必要 「猫との共生」について考えてたんですけど、実際にコロナが起きた時に(自分の猫を)救えないっていう…感染した時に(自分が隔離されて)家の中に猫を置きっぱなしにして餓死させることになるかもしれないっていう現実があった時に、保健所に尋ねても守りようがなかったですし、最終的には身内のボランティアさんが助けてくれたんですけど…防護服をたまたま持っていたから、私の家に入って猫のご飯をあげてくれたりしましたけど、こういうのはやっぱり「ちゃんと(備えを)作っておかなきゃいけないな」って思いましたよね。何もない時に… コロナじゃなくても、自分が何かの原因で帰れなくなったとか、何かがあった時に、やっぱり家の中に生命があったらそれは守らなきゃいけないし。 人間の手ではどうにもならないこともあるし、何かを「抑えて」しまうとやっぱりどこかで「歪み」が生まれて、また新しい、向こうは向こうで強い何か(ウイルスなど)が生まれてくるっていうのを…となると、やっぱり、「おごっちゃいけない」のかなっていうことは感じましたし、すごく教訓になりましたよね。