新型コロナウイルスへの提言

新型コロナウイルス悪化の原因は血流感染▽肺だけでなく血管にダメージを及ぼす新たな感染症だった▽罹患する恐怖の中で医療者はどう治療に向き合ったのか?▽ワクチンと抗ウイルス薬の最新情報・後遺症を緩和するエビデンス▽コロナ禍で生まれた医療の“オープンアクセス”とは?▽新型コロナによる死亡者は増加・求められる早期診断と治療▽第一次世界大戦時に発生した“スペイン風邪”は約100年続いた⁉▽2009年の新型インフルエンザ対応から今のコロナ医療をひもとく▽ウイルスと共生する社会・パンデミックに冷静さを保つインフラは築けるのか?
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長崎大学医学部を1994年に卒業し、米国University of NebraskaやUniversity of Michiganでの研究生活を経て感染症診療分野でのキャリアを積んだ。これまで大阪大学のほか東北医科薬科大学で臨床にあたり、2022年より現職。感染症診療・感染対策の教育と研究、院内感染防止の推進に尽力している。日本感染症学会専門医・指導医でもある。
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長崎大学医学部を1994年に卒業し、米国University of NebraskaやUniversity of Michiganでの研究生活を経て感染症診療分野でのキャリアを積んだ。これまで大阪大学のほか東北医科薬科大学で臨床にあたり、2022年より現職。感染症診療・感染対策の教育と研究、院内感染防止の推進に尽力している。日本感染症学会専門医・指導医でもある。
Clip.01“血液感染”新型コロナの正体
やはりいろいろな噂を聞いていたので非常に重症だろうと。 そしてウイルス性疾患ということでインフルエンザに準じた熱が出て、そして肺が非常にダメージを受ける呼吸器系のウイルス性疾患だろうというふうに想像していたんですけれども。 実際に患者さんを診た、あるいは画像を見たんですね。いわゆるレントゲン あるいはCT。 そのときにびっくりしたのが、意外と軽症の方もいるんだなということともう一つは画像で見ると全然呼吸器ウイルスではないと。薄い磨りガラス状の丸い影、僕らマリモって言ってましたけど。そういうマリモみたいな影が肺の端っこのほうにできるんですね。だからこのウイルスは僕はパッと見たときに肺炎というよりは、その血液に乗って体中のですね。最後に肺に到達する、そのときに肺の端っこの方にですね。病変をつくるんですね。それと全く同じ画像だった。つまり肺のいわゆるレントゲンを撮ると、あるいはCTを撮ると肺の真ん中の方から、つまり鼻から口から入ってきたウイルスがこういうふうに両サイドに広がっていくわけですね真ん中の方から、ところが僕が見た画像というのは、全然真ん中から広がっている画像ではなくて、CTで見ると端っこの方にまん丸い影がポコポコと出ている画像だったんですね。 こういった画像というのはいわゆる血流感染。例えばウイルス性疾患というよりもブドウ球菌みたいな細菌感染症ですね。つまり巡っている間に いわゆる血管がぼろぼろにされるんですね、血液に乗ってきますから。そのときに有名になったのは血栓がすごくできる、血管がぼろぼろになって、そしていわゆる今申し上げた肺血栓塞栓症みたいな病態、やはり肺だけじゃなくて、むしろその前に体全体の血管がダメージを受ける。血管の中でめちゃくちゃに増えているんです。人に気づかれないように。最初の頃 潜伏期って10日ぐらいあったんですけれども 1週間とか。人が気づいた頃には熱を出して排除しようとするんですね、いわゆる発症するんです。そのときはもう時 既に遅しなんです、ウイルスがめちゃくちゃに増えている。 血管がまずダメージを受けて全身性に悪くなる病気だと考えないといけないのかなというふうに思った記憶があります。
Clip.02“オープンアクセス”新しい医療のカタチ
(最初は)まず薬がない、対処法がないということで当時の世界中の医師が そうだったと思うんですけど、(治療を)やってみないとわからない。そしてやっている間にやはり患者さんがどんどん亡くなっていくわけですよね。特に若い方が。それは一番本当に怖くて。と同時にもう一つ一番怖かったのは僕ら自身。そして看護師さん。かかったら死ぬぞという恐怖感ですよね。これはやっぱりすごいストレスだったと思います。 もちろんワクチンができる、あるいは出てくる前ですね、しばらくして出てきましたけれどもその恐怖というのはやっぱり(治療法が)分からない。そして自分もかかるかもしれない。この2つの恐怖っていうのは、多分皆さんそうだと思うんですけど、やっぱり現場で特に見ていると 強烈にあったというのはやっぱり正直にお話しできると思います。 ただし、いわゆる今回は本当に世界中、あるいは日本中が挙国一致体制ですよね。いわゆる初めて学会とか、あるいはいろいろな厚労省のウエブサイトで、あらゆる情報を例えば、オープンアクセスのサイトができてうちにはこういう症例がきた、自分たちはこう思う これはどうだろうかという情報がどんどんどんどんWeb上にあふれたんですね。これはいい意味であふれたと思います。一定の専門家と呼ばれるメンバーがみんなもう、惜しげもなく自分たちの経験をリアルタイムで上げていった。 (コロナの中でオープンアクセスしようという話になったんですか?) はい そのとおりですね。2020年の1月か2月ごろ中国でどうもそういう とてつもない感染症が出てきたと。そして日本人も中国にいる何人か受け入れないといけない。そしていずれ本格的にそのウイルスは日本にも入ってくるだろうと。ではそうした時に この病原体に対して、未知の病原体に対してどうするかという、緊急評議委員会というのが たしかWebであったと思うんですけれども、今でいうZOOMですね。 これで始まったわけですけれどもその時に、前代未聞ですよ、全体のいわゆるWeb会議というのがあって、皆さんちょっと意見を言ってくださいと本当にフラットにそういう意見交換が行われたと。その中でいろいろな情報をいわゆる学会として今までみたいにクローズというか 権威を持って審査をしたりというんじゃなくてフルにオープンにしますから、いろんな情報を今後このサイトに上げていってくださいと自動的にどんどん上げられるようにしますから というのを学会が決めたわけですね。これが結構大きかったと思いますね。 その中でそれこそあらゆる専門家と呼ばれるようなメンバーがそれなりの情報を取捨選択、そして海外からの情報もちゃんとこれにクロスリンクさせながら情報がきれいになっていった。 新しい医療の姿。あるいは少なくとも未知の病原体が出たときに、僕らは何をすべきなのか、あるいは何をしてうまくいったのかという、今回のコロナの経験というのはとてつもなく大きいですし、今後の参考になるやり方ができ上がったんじゃないかなという気がします。
Clip.03“抗ウイルス薬”普及させるカギは?
現時点で残っている、いわゆる本当に純粋なコロナの薬といっていい、コロナを特にターゲットとして生まれてきたものというのを本格的に使い始めたのが2020年の後半から21年ぐらいじゃないかなという気がします。 まず点滴薬 そして次に内服の薬ですね。これが導入されていったいわゆる米国からですけども。日本という国はオープンアクセスの話もありましたけれども、もう一つすごく問題点があって 以前からワクチンにしろ、あるいは薬にしても、いわゆる厚労省のいわゆる審査が厳し過ぎて、なかなか新しいものが入りづらいという状態があったんですね。 ただし、やはりこういう緊急事態で多くの方が亡くなられているという状態なので国の方もどんどんいわゆる国内での治験を経ずにワクチンも薬も使っていいですよという緊急承認という制度を初めて始めたんですね。これはすごく大きかった。 (しかしそれがなかなか普及しない、現実もあるんですけど日本だけですかね?) それはそうかもしれないですね途中まではですね、日本も、うまく普及していたと思うんですねワクチンにしろ 抗ウイルス薬も世界と同じようなスピードで。 それが普及しなくなった一番の原因は日本という国がたまたまかもしれませんけれども、特にオミクロン株になってからですけれども、やはりこのコロナって そういうほど大変じゃなくなってきたんじゃないということをかなり、逆にこれは日本が一番世界で早かったかもしれませんけれども、もう大丈夫だろう もしかしたら国の方の財政的な問題もあったかもしれませんけれども、いわゆる公費助成ですね。これをやめちゃったんですね。これは逆に驚きでした。 これは僕は欧米というか、例えば米国のいわゆる呼吸器学会のワクチンワーキンググループ というのに入っていろんな世界中のいわゆる臨床家、あるいはいろいろな先生方と 月に一遍か 2カ月に一遍、Webを介してディスカッションをする機会、情報を共有する機会があったんですけど、その時に言われました「日本だけだぞ」って公費助成を一番先にやめちゃって、かつワクチンを年に2回(摂取)じゃなくて1回にしてしまったのはって、びっくりされました。 年に2回変異が入りますよというそのペース。つまり年に2回はリスクが来るわけですよね。 それを防御する意味でもワクチンをやはり年2回にしないといけない。あるいは薬も積極的に入れないと、やはりウイルスが残ってもちろん命を落とすこともあるし、働く方も働けなくなる。ましてや後遺症の問題が出てきました。これもやっぱり薬を飲んだ方が、明らかにあるいは、ワクチンを打った方がいいというのがわかり始めている時に公費助成をやめちゃった。そしてワクチンも抗ウイルス薬ももともと言えばすごく高価なものですから、おいそれと手を出せなくなったんですね。それで普及がおくれるようになってきていま問題になっていると。今でも例えばインフルエンザの亡くなられる方は去年がそうでしたけれども10倍以上の数のコロナで亡くなられる方がいらっしゃるわけですよね。そういうふうになってしまっているというのは、僕らみたいに基幹病院で特に重症のコロナを診ている。あるいは搬送されてくるという環境にいる人間としては本当にちょっと心外というかですね。 コロナな場合もはっきりわかりました高齢者と基礎疾患を持っている方、これが非常に危ないということがわかりましたのでこの方々に集中させるという意味では75歳以上 というのが一つのいま目安になっていますけれども、あるいは70歳 こういった方へのワクチンとか、あるいは公費助成としての抗ウイルス薬の積極的な投与ができるような体制づくりというのは、すごくやはり重要ですしやっていただければなというふうに思います。そうすると救える方がどんどん増える。
Clip.04“コロナ後遺症”早期診断の意義は
味覚障害。これはほとんどの方が少なくとも2週間は続いたというふうにおっしゃっていましたもんね。やはり最初どうもおかしかったとか、これだけでもやはり、ある意味 後遺症と言ってもいいかもしれませんし、ましてはもう御存じのとおりその、神経障害ですよね。味覚障害もそうですけれども。不眠あるいは咳が続く、頭が痛いご年配の方よりもむしろ中高年から若い方、こういった方の今申し上げた後遺症がこれだけ長く続く。ですから やはり相当この病気というのは根が深いですし、インフルエンザと違って、ただ肺炎を起こすとかというウイルスではない。 最初に申し上げた血管を非常にダメージを与える。まだ結果的にきちんとした機序というかメカニズムがはっきりわかっていないところではありますけれども、少なくとも一つわかっているのはコロナにかかると、そういった後遺症が起こり得るということになりますので。 やはりこのウイルスというのはそもそもかかっちゃいけないと。 (とはいえ罹ってしまう人がいる。 そこへの治療的対応というのはまだまだこれからですか?) 薬の使い方もはっきりわかるので(命の)レスキューできます。ところが後遺症に関しては、もう後遺症ができ上がってしまった方のコントロールというのは極めて難しい。特に頭痛とか不眠とか、いわゆる神経系ですね。あと倦怠感ですね。どうも体が動きにくい。これはもう本当に特効薬がない。そういった意味で やはりワクチンを打っておくと後遺症が少ないというデータはもうほとんどかなり蓄積されてきましたし、それと同じように できるだけ早めに抗ウイルス薬を飲んでいた方の方が、明らかに後遺症が少ないというデータも出てきましたので、早期診断からの早期治療。これは非常に重要なコロナ治療の原則として、後遺症を残さないという 目的でも重要になっていると。 薬は早めに飲んでおくメリットというのはすごく大きいですので、もちろん高齢者の重症化する方も含めて全員が本来は飲むべきなんですね。それが本来の感染症治療の鉄則ですからそれを少なくとも医師全員が あるいは看護師さんも含めてスタッフ全員が クリニックだろうが大きな基幹病院であろうが、みんな頭に置いて一定の説明をしてメッセージとして届けるということはすべきだと思いますし僕自身はそうしています。その中で例えば100%説明はしますけれども実際薬を飲まれる方が2、3割しかいかないという時期もありました。 でも考えてみたらインフルエンザも30年前に抗インフルエンザ薬って出てきたんですけれども、実は最初の頃はほとんど処方されなかったんです。なぜかというとインフルエンザはただの風邪だろうと。あるいは抗インフルエンザ薬って若干高かったんですね普通の風邪薬に比べると、そうするとそこまでしなくていいんじゃないというのがずっとあったんです。 でも やはりそもそもインフルエンザの原因、インフルエンザウイルスに決まっていますから、その原因を除去するに越したことはないんですよね。そうすると、やっぱりこれは飲むのがやっぱり鉄則だろう。肺炎のときに抗生物質のものと一緒でということで それをし始めたんですね。 特に日本が実は最初に結構積極的にやったんですけれども、そうすると逆に欧米の国から 日本をそんなに高い薬で そんな風邪ぐらいで抗インフルエンザ薬、高い薬を出さなくてもいいんじゃないかとか、あるいはそれで変異ウイルスをつくっているんじゃないかと、さんざん言われたんですけれども、有名なのは2009年に新型インフルエンザが世界的に大流行しました。その時どういったデータが世界的に出たかというと やはり抗インフルエンザ薬を飲んでいる国。実は日本ですけれどもここがぶっちぎりで死亡率が低かったんです。そして かつ妊婦さん。妊婦さんで新型インフルエンザで命を落とされた方が世界中にたくさんいらっしゃいます。お子さんとともに実際に日本だけが妊婦さんの死亡0だったんです。これをもって世界中がやっぱりインフルエンザの治療方針を変えようと。日本と同じように48時間以内にやはり積極的に本来飲ませるべきものなんだという感覚に変わってきたわけですね。 それと全く同じことが今回コロナで起こっているんですね。 だからこそ今回のノウハウが次の新型ウイルスのパンデミックに備えるという意味で、僕らがこうやって記録を残す。そして僕らがその経験ですね、プロセスをまとめていく。そしてつないでいくということは、記録していくということですね、重要だというふうに思います。
Clip.05“共生と啓蒙”未来に必要なこと
インフルエンザがそうですけれども、もうずっと太古の昔からあるわけですよね。いわゆるA型のH1と言われるウイルスは、スペイン風邪という第1次世界大戦の頃に出現して約100年間続いた。そして2009年の新型ウイルスの時に、かなり大きなチェンジ(変異)があったわけですけれども、新しい ちょっと形を変えてまた続いていったわけですね。ということは新しいウイルスが今後出てくるにしても、今回のSARS-Cov2(新型コロナウイルス)をつくって、ウイルスが恐らく100年。うまくいっても10年以上続くと。何らかの形でもしかしたらSARS-Cov3という形になる可能性もありますけれども、ずっと僕らはそういったウイルスと向き合っていかなければならない。あるいは共生していくということをしないといけないと思うんですね。 でも大きな変化が起こった時に、今回のパンデミックがそうでしたけれども、やはり多くの方がそれに対応できずにウイルスの方が強力で命を落としてしまうということが、これからも何年かあるいは何十年かおきのサイクルで必ず来ると思います。 そういったパンデミックが起こった時に、やはり、いわゆる大騒ぎしないというか、冷静さを保つような社会的ないわゆるインフラ。あるいはノウハウ 規則。これは行政の方にも頑張って いただかねばならないですけれども、社会的なバックグラウンドも、心理的なものも含めてつくっておくということをしないといけないので。それこそいわゆるマスコミの方にも協力いただいてこれはちゃんとこういったことでできるんだということを普段からですね。啓蒙あるいは発信していくということを継続的にやっていただければなというふうには思っています。 今でも新型ウイルス発生を念頭に置いた、いわゆる災害訓練的なもの、あるいは定期的な、いわゆるパニックに備えた話し合いというのは常日頃から定期的に行われていますので、これは国レベルでも市町村レベルでも、あるいは各病院レベルでもこういったことをやはりずっとやっていくということで、感染症対策、あるいは災害対策と一緒ですよね、これと同じように やはりやっていくということが非常に重要なんだろうというふうに思います。

- 国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所
- 応用疫学研究センター長、人材育成局 研究企画部部長(併任)

- つくばダイアローグハウス院長
- 筑波大学名誉教授
- 精神科医、批評家

- 新型コロナウイルス感染症対策分科会 元会長
- 公益財団法人結核予防会 理事長

- 沖縄県立中部病院
- 感染症内科・地域ケア科 副部長

- 医療法人社団 悠翔会 理事長
- 訪問診療医

- 俳優・タレント

- 大阪大学医学部附属病院 感染症内科 診療科長
- 大阪大学大学院医学系研究科感染制御医学講座(感染制御学)教授

- 国際医療福祉大学医学部感染症学講座 代表教授
- 同 成田病院感染制御部 部長